【5/12】出逢いの少ない通信制の高校で、自傷症の転校生に恋した俺の一年間
長井「あれ、安藤君の背中あったかいね」
俺「俺は昔、人間ストーブって言われてたから」
長井「なにそれおかしいwwwでもストーブなら活用しなくちゃね」
そう言って長井が俺の背中を両足で挟んできた。
長井「あったかい」
俺「あ、ああ、遠慮なく使いなさい」
もう俺心臓バクバクwwゲームに集中できないwww
だって好きな人が自分の背中を足で挟んでるんだぜ!
理性なんかたもてねえよ!
時間はあっという間に過ぎ、外は真っ暗になっていた。
長井「そろそろ帰る」
俺「そうだね、家遠いし」
長井「何かゲーム貸してくれない?」
俺「いいよ、そこのケースに入ってるやつから好きに持っていって」
長井「うーん、じゃあこれ」
長井はゼルダのソフトを選んだ。
俺「バス停まで送るよ」
長井「ありがと」
外は昼間の何倍も寒かった。
俺は自販機であたたかいココアをふたつ買い、ひとつを長井に渡した。
そしてそれを飲みながら一緒にバス停まで歩いた。
長井「ココアってこんなにおいしかったっけ」
俺「俺もびっくり。すげえおいしい」
長井「やっぱり寒いからかなー」
俺「かもね」
長井「ねえ、安藤君って一年生の最初から今の学校にいるの?」
俺「いや、一年の終わりのほう。長井が来る半年ほど前に転校してきた」
長井「そうなんだ・・・。なんで、転校したの?」
訊きづらそうに訊いてきた。
通信学校ではこの質問はタブーみたいなところがあったんだ。
みんな何かと暗い過去があるからな。
でも俺は違った。
俺「早起きが出来なかったんだ」
長井「えっ、それだけ?」
俺「・・・はい」
こうなるからなるべく前の学校を辞めた理由を言いたくなかった。
俺「長井は?」
長井「私は、いじめられてたから」
俺は特に驚いたりしなかった。クラスにもそういう人がいっぱいいるだろうし。
ハマーも中学の時いじめられていたと言っていた。
長井「学校サボって死ぬところを探したりしてた」
しかしこの死ぬって言葉には驚いた。
俺「・・・なんかごめん」
長井「なんでよww」
俺「なんとなく」
今までのんきに生きてきた自分が馬鹿らしく感じた。
そしてもう少し早く長井と出会っていればという自分でもどうしようもない後悔が襲ってきた。
見ているぞ
>>98
誰もいなくても淡々とやっていくつもりだったんだけど
その言葉はやっぱりうれしい
俺「まあ、その・・・死ぬ場所を探すくらいなら、また俺と遊ぼうよ。そっちのほうが楽しいじゃん」
長井「・・・うん、そうする」
いつの間にか俺たちはバス停に着いていた。
そしてすぐに長井が乗るバスが到着した。
長井「来週暇だったら、今度はうちに来て」
俺「わかった。絶対行くよ」
バス停からの帰り道、明らかに来た時よりも長く感じた。
11月12日(114日目)
今日は長井の家に遊びに行く日。
にもかかわらず長井は学校に来ていなかった。
俺は心配になり長井に電話した。
しかしなかなか電話に出ない。
もう一度かけるがやはり出ない。
3度目の目の電話でやっと繋がった。
長井「もしもし」
俺「あっ、長井!お前今どこだよ!」
長井「家だよ。今起きた」
俺「家?・・・なんだ、よかった」
長井「なんで安心してるの?」
俺「いや、なんでもない」
俺はてっきり死ぬ場所を探しているのかと思っていた。
おい…これはまさか…
長井「今日うちに来るんだよね」
俺「そうだけど、俺長井んちの場所知らねえよ。たしか電車で通学してるんだったよね」
長井「そうだよ。じゃあ学校が終わったら電話して。どこでどの電車に乗ればいいか教えるから」
俺「あいよ」
長井「あっ、お昼ご飯は食べてこないでいいからね」
俺「ということは?」
長井「私が作るから」
俺「よっしゃ!オッケ!楽しみにしとく!」
長井「そこまで期待されても困るww」
俺「ならまったく期待しないでいるよ」
長井「それはそれで・・・ちょっとは期待してww」
俺「わかったww」
その後の授業中俺はずっとニヤニヤしてたwww
いやー周りは気持ち悪かっただろうな。
学校が終わり長井にどの駅でどの電車に乗るか聞いた。
俺は方向音痴というわけではなかったから、特に迷うことはなかった。
教えてもらった駅で降りると長井が待ってくれていた。
俺「よっ、これお土産」
俺は来る途中のコンビニで買ったプリンを渡した。
長井「ありがと」
俺「やっぱここは山がいっぱいあってきれいだな」
長井「安藤君の家から見える海もきれいだよ」
俺「俺はここのほうがいいな」
駅から長井の家までさほど距離はなかった。
長井の家は普通の一軒家だった。
家に入ると長井は俺をリビングっぽい広い部屋へ連れて行った。
そこにはテーブルとテレビと大きな電子ピアノがあった。
長井が言うにはここは居間らしい。
俺「長井の部屋には行かんの?ww」
長井「顔がゲスいよww私の部屋は汚いからダメ」
俺「残念・・・」
長井「じゃあさっそくごはん作ってくるね。そこにあるゲーム好きなのしてていいから」
長井がテレビ台を指差してそう言った。
そこには大量のゲームがあった。
もちろんドラファンも。
俺「スマブラやってるよ。ごはん何作るの?」
長井「ひみつ」
俺はワクワクしながらスマブラを起動した。
俺が一人スマブラに飽きてきたころ、長井がおぼんに何かをのせて持ってきた。
長井「お待たせ」
テーブルの上にリゾットらしきものとインスタントのコーンスープが並んだ。
俺「いい匂いがする。これ、リゾット?」
長井「うん、しめじとベーコンのリゾット。料理がうまい人に料理を出すのはちょっと恥ずかしいけど」
俺「そんなことねえよ。じゃ、いただきます!」
俺はリゾットを口に運んだ。
俺「・・・おいしい」
長井「ほんと!?よかった」
長井が作ったリゾットはお世辞抜きでおいしかった。
明らかに俺より料理がうまい。
少し悔しかった。
ニヤニヤする
昼ご飯を食べた後は一緒にスマブラをした。
何回か勝負をしたが長井はゼルダしか使わなかった。
実力は五分五分ってところ。
しばらくするとゲームにも飽きて、ふと部屋を見渡すと電子ピアノが目に入った。
俺「長井ピアノ弾けるの?」
長井「弾けないこともない」
俺「合唱コンクールで伴奏やった?」
長井「やった」
俺「じゃあ結構うまいな」
長井「何その基準ww」
俺「ちょっと何か弾いてみて」
長井「いいよ」
長井はピアノで何かを弾きはじめた。
あとでわかったけどこのとき弾いていたのは久石譲の『あの夏』だった。
みんなが聴けば決してうまいと言えるような演奏ではなかったが、俺の心には十分届いた。
長井が弾いたからかな?
ピアノってこんなに素晴らしかったのかと少し泣きそうになった。
正直、涙目にはなっていたと思うww
長井の『あの夏』を聴きいたあと、俺はしばらく何も考えられなかった。
それほど俺の心に残った。
あの夏じゃなくてあの夏へだな
あの夏へとか神曲やんwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
俺「長井、ポリアンナ弾ける?」
長井「なにそれ」
俺「マザーってゲームの曲」
長井「ネスの?」
俺「うん、ネスは2だけど。俺そのポリアンナって曲が好きだから、弾いてくれないかな」
長井「いいけど、楽譜がないと」
俺「パソコンで探したら見つかると思う」
長井「わかった。探して練習しておくね」
俺「頼む」
長井のピアノ演奏を聴いたら、無性にポリアンナの生演奏が聴きたくなった。
テレビの横には本棚があって、様々な漫画や文庫本が並んでいた。
俺はその中からコナンを選び読み始めた。
長井は俺が貸したゼルダを始めた。
この間ずっと沈黙が続いたがまったく気まずくなかった。
むしろ心地よかった。
長井「あっ、ダメ!」
長井が急に声を上げた。
俺「何が?」
長井「本を90度以上開かないで」
俺「90度!?難しいぞ」
長井「ごめんね。私の家では本を大切にすることになってるの」
俺「そうなんだ。いいことだよ」
長井「安藤君、その巻まで読んだら一緒に行きたいところがあるの」
俺「どこ?」
長井「私のお気に入りの場所」
死に場所じゃないだろうな
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