【8/12】出逢いの少ない通信制の高校で、自傷症の転校生に恋した俺の一年間
ハマー「お前これ・・・血じゃねえか」
俺「・・・」
俺はハマーと目が合わせられなかった。
ハマー「説明してくれ」
俺「・・・ああ」
俺「これは長井の血だ」
ハマー「それはだいたい分かる。分かんないのはなんでそんなものがここにあるのかってこと」
俺「・・・あいつ本人から貰った」
ハマー「じゃあ、長井はリスカしてんのか?」
頭がキレるやつだ。
俺「手首だけじゃなく首もね。これはその首の血」
ハマー「・・・」
あきらかにハマーの顔は引きつっていた。
ハマー「お前もう・・・長井とは関わらない方がいいぞ」
ハマーが唐突に言った。
俺「おっ?僕にやきもちを焼いているのかな?お前やっぱ男が好きだったのかww」
ハマー「おい安藤、今はおふざけなしだ」
俺「・・・わかってるよ」
ハマー「もう一度言うぞ。もう長井と関わらない方がいい」
俺「・・・できるわけねえだろそんなこと」
ハマー「お前が長井のことを好きなことはわかる。でもな、これから受験などがある大事な時期なんだぞ。
長井のせいで精神がぶっ壊されたらどうすんだよ!」
俺「それでも、俺は長井と約束したんだよ。あいつのそばにずっといるって」
ハマー「あーあ、約束しちゃったか・・・」
俺「ああ」
その瞬間ハマーが顔をぐいっと近づけてきた。
ハマー「お前も本当は思ってるんじゃないのか?これは普通じゃないって」
俺「・・・」
ハマー「やっぱりな」
俺「なんで確信するんだよ!」
ハマー「お前は嘘つけないからな。本当のこと言われると黙るんだ」
俺「・・・」
ハマー「ほらそれだ」
俺「あっ」
ハマー「ちょっとトイレ」
ハマーは部屋から出て行った。
ハマーはトイレから戻ってくるなり言った。
ハマー「このままいけばお前はどんどん泥沼にはまっていく。だけど関わらないなんてことできないだろ?」
俺「うん」
ハマー「じゃあ少し距離を置いてみたらどうだ?」
俺「・・・考えとく」
そんなことしたくなかったけどな。
ハマーが言っていることも一理ある。
ハマー「11時になったぞ。そろそろ行くか」
俺「・・・うん」
長井のことでさらに頭がいっぱいになってもう初詣なんてどうでもよかった。
1月1日(164日目)
年が明ける瞬間はお参りの列に並んでいる時だった。
電波の頃合いを見計らって、俺は0時15分くらいに長井に電話を掛けた。
俺「明けましておめでとう」
長井「おめでとう」
俺「えっと、長井・・・」
長井「何?」
俺「俺、もう長井にモーニングコールするのやめるよ」
長井「・・・そう」
俺「・・・じゃあ、電話切る」
長井「・・・うん」
距離を置かなきゃ俺はダメになる。
そう自分に言い聞かせた。
1月2日(165日目)
長井からメールが来た。
長井『ゼルダいつ返せばいい?』
俺『いつでもいい』
そっけなく返事をした。
長井『わかった』
俺はそれ以上メールを続けなかった。
1月3日(166日目)
ここ2ヵ月、毎日長井からメールなり電話なり来ていたが、この日は何もなかった。
だから俺も何もしなかった。
ただ、これが辛かった。
たとえ死にたいなんて言われようと、俺は長井と話すのが好きだったし、それが毎日の楽しみになっていたから。
1月4日(167日目)
この日も長井とは何もなかった。
電話をして話したかったが我慢した。
1月5日(168日目)
変に距離を置くほど、俺の長井に対する気持ちはどんどん大きくなっていった。
悩んで悩んで悩みつくして、俺は決めた。
長井とは今後一切関わらないことを。
そして夕方ごろ、長井に最後の電話を掛けた。
俺「もしもし」
長井「うん」
俺「あのさ、俺・・・もう、長井とは関わらない」
長井「あっそ、じゃあね」
一瞬だった。
電話が切れたあと、俺は風呂に入った。
これでいいんだ。
これで俺は、長井のことなんて考えないで楽に暮らせる。
なんて風呂につかりながら考えたんですけどね。体は正直なんですよ。
また自然に涙が出てきたの。
長井との楽しい思い出とともに。
これってどれくらい前?
>>176
俺が今20代前半だから7,8年前かな
>>178
ありがとう教えてくれて
ちょうど7 8年前の年頃なので…つい聞いてしまいました
>>181
きみもいろいろあったんだな
>>182
今も起きてますけどねwww
でもあまり人に言いたくないことなので
すいません
一緒にゲームをしたり、ご飯を食べたり、神社で話したり、そういう当たり前のことさえも楽しい思い出として頭の中に湧き上がってくる。
なんでこんな時に限って・・・。
そして涙を流しながら俺の考えは変わった。
「たとえ将来どうなろうと、長井のそばにいたい!それが俺の望むことだ!」と。
風呂から上がり、長井に電話した。
出ないかと思ったが長井は出てくれた。
長井「何?」
俺「長井、ごめん。俺やっぱり無理だ。お前と関わらないなんて」
長井ならきっと許してくれるだろうと信じていた。
長井「もういいよ、今さら」
俺「えっ?」
予想外の答えだった。
長井「安藤君私と約束したよね?ずっとそばにいるって」
今まで聞いたことのない冷たくて早い口調だった。
俺「だから、こうやって戻ってきたんだよ。長井のことが好きだから」
長井「好きならなんであんなこと言ったの?」
俺「・・・」
言えるわけがない。
「これから先もずっと大切な人が自分自身を傷つけるところを見るのに耐えられそうになかったから」
なんて長ったらしい自分勝手な理由が。
長井「はあ、もう安藤君のことが信じられない。これから学校では行事で話さなきゃいけない時だけが話そうね」
俺「なんだよそれ・・・」
長井「いやなの?私はこういうのに慣れてるから何とも思わないよ。
それに今回は付き合うことを提案された時点で少々気持ちが沈んでいたから過去のような気持ちにならないで済んだんだけどね。ありがとう」
長井が俺のことをどう見てたか少しわかった気がした。
俺「・・・じゃあ俺は今まで通り長井に都合よく使われればよかったのか?」
長井「ねえ、その都合よくって何?」
俺「長井が言ってほしいことを言って、してほしいことをするってこと」
長井「それに応えるのは私が決めることじゃないよね。
だいたい都合よく相手するのが嫌で後からこんな風に言うなら最初から相手しなければよかったのでは?」
確かにそうだ。
ただ断ればいいのに、俺は長井を喜ばせたり安心させたりしたくて、自分を殺していた。
長井も人の温かさを知らないのかな?
いや知らないからこんなこと言えたんだろうね…
長井…か
長井「つまり安藤君は見返りがほしかったんだよね」
リスカにしてもその通りだ。
長井が自傷行為をやめるという見返りがほしいだけで、俺は散々説得してきた。
まあ長井はリスカをやめたいとは思ってなかったから、これは俺の勘違いだけど。
俺「そうだよ。俺は・・・」
と言ったところで思いとどまった。「長井のため」なんて言っても信じないだろう。
俺が黙っていると長井が言った。
長井「結局あなたも今までの中の一人になるだけ」
俺「・・・!!」
ショックだった。
この言葉が一番傷ついた。
俺は長井にとってなんでもなかったんだ。
すると目に涙がにじんだ。
やはり俺の涙腺はゆるい。
このままじゃ涙声になって泣いているのがばれてしまう。
焦りや悲しみやらで頭がごちゃごちゃになり、つい言ってしまった。
俺「自分を客観的に見ろよ!!!」
長井にこんなに大きな声を出したのは初めて会ったとき以来だった。
長井「・・・お前にそんなこと言われたくない!!!」
長井が言い終わると同時に電話が切れた。
俺は机の中にしまっていたクリスマスプレゼントをゴミ箱の中へ思い切り投げ込んだ。
なんか…修羅場だな…
そういう風になるのが怖い
http://hayabusa.open2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1416405803/
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